小児科で教えてくれない軟膏の塗り方。FTUを知ろう!

生後まもなくキョウレツな新生児湿疹に悩む
息子は生後2週間目で新生児湿疹で顔が真っ赤になりました。産後に大阪の実家に帰ったので、近くの小児科を受診したものの、「脂漏性湿疹だからと石ケンで顔をしっかり洗ってあげるように」と言われただけで、塗り薬は処方されませんでした。
その後もまったく治らない新生児湿疹に悩まされ、1か月検診のために出産した東京医科歯科大学病院の小児科にかかったとき、「ここまでひどくなったらステロイドで治しましょう」と初めてロコイド軟膏とプロペト(ワセリン)を処方してもらいました。1日3回ほどロコイド軟膏の上にプロペトを重ねて塗っていたところ2日ほどで一気に赤味が引き、その後1日2回、1日1回と徐々に量を減らしていきましたが、あの真っ赤な湿疹が再発することは二度とありませんでした。息子には1か月間もつらい思いをさせてごめん!と思いました。

▲生後2週間の息子、ニキビヅラ風の湿疹が・・・
そもそも論。軟膏ってどう塗るの?
私は4才の頃から小児アトピーを持っていました。成長とともにほぼおさまりましたが、今でも体や顔のごく一部にたまに出るときがあるので長い付き合いになります。でも、ただの一度も軟膏の塗り方やどれくらいの量を塗ったらいいのかを皮膚科で指導されたことはありません。飲み薬だったら1回〇錠一日△回食後になどと細かくきまっているのに不思議な話ですよね。でも実は軟膏にも、国際的に知られたFTU(finger tip unit)という基準があるのです。FTUとは「口径5 mmの チューブから押し出された量(約0.5 g)を成人の手のひらで2枚分に塗る」というイギリスで作られた基準です。最新の日本皮膚科学会のガイドラインにも、このFTUを日本人が軟膏を塗るときの目安にしてOKと書いてあります。病院でもらう軟膏のチューブ口径は約5 mmなので、塗り方はお母さんの(※お子さんのではありません!)第一関節をニュ~っと出して、それをお母さんの手のひら2枚分の広さになるようにお子さんの患部に塗り広げます。患部が手のひら1枚分しかないのなら、第一関節の半分まで出します。実際にやってみると結構な量なので、最初は驚かれるかもしれません、見た目もテッカテカですし(笑)。でも驚くということは今まで塗っていた量が少ないということなのです。これまで軟膏塗っても効かないんだよね、という方はFTUの通りに正しい量を塗ると効果が出るかもしれません。お子さんがまだねんね~ハイハイの月齢だったら、ステロイド軟膏の上に、プロペトをべったり塗り重ねてあげると擦れ取れてしまうのを(ある程度は)防ぐことができるのでおすすめです。
かかりつけの小児科の処方を確認してみる
小児科でもらうステロイド軟膏といえば、ロコイドかキンダーベートが多いと思います。ステロイドには効き目の強さでベリーストロング、ストロンゲスト、ストロング、ミディアム、ウィークの5つにクラス分けされています。ロコイドもキンダーベート同じ「ミディアム」という下から2番目のクラスのステロイドですが、お医者さんの間では経験的に若干キンダーベートの方が弱めだと認識されているようで、ロコイドよりもキンダーベートを好んで処方するお医者さんもいるとのことです。私も息子にはどちらも使用した経験上、やはりロコイドの方が効果が高いようでした。ちなみにロコイドは大人でも湿疹で皮膚科に行くと処方されることが多いですね。皮膚科医にきいてみたところ、大人の場合、ロコイド=顔、リンデロンV=顔以外が一般的とのことです。小児科医は皮膚科の専門ではないため、あまりそのあたりに詳しくない先生は幼児にもかなり強めのステロイドを出しまうケースがあるそうです。赤ちゃんや幼児の軽い顔湿疹に下に載せたリストの中でストロングクラス以上(リンデロンなど)が処方されたら、要注意ですね。ステロイドは目に入ると緑内障の危険があるので、強いステロイドを顔面に使用するのはNGなのです。
ステロイド塗り薬のクラス分け
以下が病院で処方されるステロイド成分の一覧です(括弧内は製品名)。
ストロンゲスト (最強)
0.05% クロベタゾールプロピオン酸エステル(デルモベート ®)
0.05% ジフロラゾン酢酸エステル(ジフラール ®,ダイアコート ®)
0.1% モメタゾンフランカルボン酸エステル(フルメタ ®)
0.05% 酪酸プロピオン酸ベタメタゾン(アンテベート ®)
0.05% フルオシノニド(トプシム ®)
0.064% ベタメタゾンジプロピオン酸エステル(リンデロンDP®)
0.05% ジフルプレドナート(マイザー ®)
0.1% アムシノニド(ビスダーム ®)
0.1% 吉草酸ジフルコルトロン(テクスメテン ®,ネリゾナ ®)
0.1% 酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン(パンデル ®)
ストロング (中間の強さ)
0.3% デプロドンプロピオン酸エステル(エクラー ®)
0.1% プロピオン酸デキサメタゾン(メサデルム ®)
0.12% デキサメタゾン吉草酸エステル(ボアラ ®,ザルックス ®)
0.1% ハルシノニド(アドコルチン ®)
0.12% ベタメタゾン吉草酸エステル(ベトネベート ®,リンデロンV®)
0.025% フルオシノロンアセトニド(フルコート ®)
ミディアム (2番目に弱い)
0.3% 吉草酸酢酸プレドニゾロン(リドメックス ®) 0.1%
トリアムシノロンアセトニド(レダコート ®)
0.1% アルクロメタゾンプロピオン酸エステル(アルメタ ®)
0.05% クロベタゾン酪酸エステル(キンダベート ®)
0.1% ヒドロコルチゾン酪酸エステル(ロコイド ®)
0.1% デキサメタゾン(グリメサゾン ®,オイラゾン ®)
ウィーク (最弱)
0.5% プレドニゾロン(プレドニゾロン ®)
FTUはステロイドに限らず、全ての塗り薬に共通した基準ですので、ぜひ参考にしてみてください。そして、湿疹がおさまったら毎日徹底的に全身の保湿にはげみましょう!保湿スキンケアの話はまた別記事で書きますね。
参考文献:
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2016 年版
British Jounral of Dermatology.138:293-6,(1998)

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