学校給食の誤食事故から親ができることについて考えてみた

週末に受けたエピペン講習で質疑応答の時間があったので、アレルギー専門医にずっと気になっていたことを質問しました。

それは5年前に東京都調布市で起こった誤食による死亡事故のことです。

除去食を食べていた乳アレルギーの女の子が、おかわりで通常食の粉チーズ入りチヂミを誤って食べてしまい、アナフィラキシーショックで亡くなった事故です。当時はまだ独身でしたが、ニュースをみて衝撃を受けたのを覚えています。

自分もその後、息子が重篤な乳アレルギーと分かり、この事故のことで学校給食についてかなり不安を感じていました。

この事故では救急搬送前に校長先生が女の子にエピペンを打っています。それなのに、なぜ女の子が亡くなったのか、専門医の意見を聞きたかったのです。

この専門医によると、死亡事故にいたった理由は、エピペンを打つタイミングがあまりにも遅すぎた学校側の対応に尽きるそうです。

さらにアナフィラキシーショック状態の女の子を養護教論がおんぶをしてトイレに運んだことは、死因と断言まではできないものの絶対に避けるべき行為だったとのことです。

女の子が不調を訴えた時点で周りの先生がエピペンをすぐに打っていたら、助かっていた事例なのだそうで、この事故について話すアレルギー専門医は悔しそうな表情でした。

エピペンを打って緊急搬送すべき食物アレルギーの13症状の中には「失禁」があります。専門医によると失禁の症状が出たら、いよいよ生命の危険が迫っていることなのだそうです。

女の子は周りにたくさん人がいる中で絶対におもらしはしたくなかったから、最後の力を振り絞ってトイレに行きたいと言ったのだろうとのこと。そしてトイレに着いた時に心肺停止になってしまった。それを聞いて思わず涙がこみあげてきました。

じつは、この事故に関する報告書を文科省がwebで公開しています。

報告書によると、女の子が不調を訴えてから9分後に救急要請され、14分後にエピペンを打っていました。この異変に気付いてから14分後というタイミングが「あまりにも遅すぎる」ことは、アナフィラキシーやエピペンに関する知識がないと想像できないかもしれません。

さらに、女の子のお母さんのインタビュー記事も読みました。普段おかわりしないのにこの日に限って手を挙げた理由についても語られていました。

学校は給食を残さない運動をやっているのに、その日のチヂミは不人気でクラスのみながあまり食べたがらなかったからだそうです。

人がやりたがらないことを率先してやる責任感の強い女の子だったんだろうと思います。

少し前のデータですが、学校給食での食物アレルギーの発生件数は4年間で804件という報告があります。平均すると年に200件も事故が起こっていることになります。

女の子のお母さんは、「どうしたら食べられない食材を口にしないか考えてほしい」とおっしゃっていましたが、給食を作るのも人間、確認するのが人間であればヒューマンエラーは必ず起こるものだと思います。

この事故の起こった学校でも、おかわりの際は担任が除去食一覧表(担任用)で確認するルールになっていました。

しかし実際は担任は、お母さんが女の子に持たせていたルール外の献立表(女の子が食べてはいけないメニュー名にお母さんがピンクのマーカーを引いていた)だけを確認し、残念ながらチヂミにピンクのマーカーは引かれていませんでした。

わたし自身、息子が以前に食べれていたことでチキンラーメンに乳成分が入っているのを見落とし、息子にアナフィラキシーを起こさせてしまった苦い経験があります。

人間が関わる以上、やはり事故は必ず起こるものと考えて、それに備えて行動するのが子供の命を救う近道だと思うのです。

エピペン講習の専門医によると、園や学校によって、エピペンへの使用に備えた対応は全く違うです。熱心に講習会を開くところもあれば、そうでないところもある。

重篤なアレルギー児の親としては、自治体や学校の指針に任せず、13症状を印刷したものを先生に渡し、いざという時は一刻も早くエピペンを打っていただけるよう働きかけることはしようと思っています。

今、保育園に緊急時薬を預けるための長い長い手続き中ですが、それが終わったら先生達に私からお話をしたいと思っています。

〈参考〉

調布市立学校児童死亡事故 検証結果報告書概要版 – 文部科学省

亡くなった女の子のお母さんのインタビュー記事

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