息子は生後まもなく牛乳アレルギーが疑われる症状が出て(粉ミルクによる嘔吐・発疹)、5カ月の時に血液検査とこれまでの症状で牛乳アレルギーと確定しました。
他に卵や魚卵のアレルギーもありますが、牛乳は常に血液検査でクラス5~6の重度で、過去に乳製品と揚げ油を共有したフライドポテトでアナフィラキシーを起こしたこともあります。
当時のわたしは無知で、アナフィラキシーの症状も知らず、「エピペンは不要」というアレルギーに理解の乏しい地元の小児科医の言葉をうのみにして、抗ヒスタミンシロップを飲ませて様子を見たりしていたのです。
それが、昭和大学小児科でアレルギー専門医にかかり、息子が重度のアレルギーであること、過去の症状は実はアナフィラキシーですぐに緊急搬送するべき危険な症状だったことをはじめて知りました。
昭和大学病院ですぐにエピペンを処方され、エピペン講習も受け、アナフィラキシーの危険さについても十分を理解したつもりでした。
今回は、そんな状態にもかかわらず、わたしの不注意で息子がアナフィラキシーになり、実際にエピペンを使用した体験談を書きます。
ホームパーティでアナフィラキシを起こす
その日はホームパーティをしていて、アレルギーのこともあり息子だけ先に夕ごはんを済ませていました。
お腹いっぱいになった息子はおもちゃで遊んでいたので油断して目を離してしまった間に、息子が他の方の取り皿にのっていたお肉を一口食べてしまい、運悪くその取り皿には生クリームが付着していたのでした。
それから30分ほど経ったとき、息子が「かゆい」といって体を掻きだしました。
皮膚症状のみだったので抗ヒスタミンシロップ(ジキリオンシロップ0.02%)を飲ませて様子を見たところ、それから3分ほどで今度は咳き込み出しました。
咳は強く断続的で、まもなく首も掻き始めました。
エピペン講習で「子どもが首を掻きむしる時は、たとえ言葉で表せなくても呼吸が苦しいサイン」と習ったのを思い出したところ、直後に息子が「くるしいよぅ」と言いました。
この症状を目の当たりにしてエピペンを打って緊急搬送しなければ!と覚悟を決めました。
エピペン講習ではアナフィラキシーは分単位で症状が進むので1分でも早く打つこと、と何度も聞いていたので、ここまでの行動は早かったかもしれません。
急いでカバンからエピペンを取り出し、息子のズボンを脱がしましたが、ここで自分にとっては思わぬことが起こりました。
練習用エピペンであんなに練習したはずなのに、本番用エピペンをケースから取り出してみて、若干仕様と色が違うのに一瞬混乱し、なんと打ち方がわからなくなってしまったのです。
(筒の部分を持って押すのが正しいところ、なぜか「あれ?シャープペンのようにノックするんだっけ?」と思ってしまうという・・・)
一見取り乱すこともなく冷静に行動しているようでいて、実際は脳内で静かにパニックになっていたのでした。
後から思い出しても、普段冷静だと思っていた自分がパニックになるなんて想像もしていなかったので、とてもショックでした。
とにかく、打つ係は夫に託して、私が床に座った状態で息子を対面抱っこして息子からエピペンを見えないように体を押さえ、無事に夫に打ってもらいました。
息子が咳をし出してから、エピペン投与完了までは7~8分でした。それからはアナフィラキシーのマニュアル通りにすぐに119に連絡しました。
救急車はすぐ来てくれたのですが、近隣の病院が軒並み受け入れ「×」で搬送先が決まらず、エピペンの効果は15分程度しか続かないので、症状がぶり返すのではないかと不安でした。
救急隊員のかたはその間ずっと本部とコンタクトを取りながら受け入れ先を探してくれていました。
20分ほど経ち、ついにかかりつけの昭和大学から受け入れ許可が下り、緊急搬送されました。
(実は昭和大学も受け入れ「×」だったのですが、救急隊員の方が普段息子がかかっていることと我々夫婦も希望していることを伝えてくれ、受け入れ可となりました)
幸いにもエピペンを投与した直後に咳と息苦しさが消え、病院ではメプチンという器官拡張剤の吸入と2時間の経過観察(酸素計と血圧計を付けたままモニタリング)のみで帰宅することができました。
完全に自分の不注意から息子を苦しく痛い目に合わせてしまい、救急隊員や救命救急医に助けていただいて、本当に申し訳なさでいっぱいですが、今回のことで気付いた大切なことは以下のことです。
1.エピペンの練習は毎日やる勢いでやっておく
→簡単だと思ってサボると、パニックになります
2.本番用と練習用の仕様の違いを目で見て確認
→本番用はスケルトン、練習用はグレー色
3.救命救急のあるかかりつけ医を持つ
→アレルギーに理解のある搬送先がベスト
4.かかりつけ医の診察券と保険証類は常に携帯
→搬送希望先と診察券番号はかならず聞かれます
ちなみに救命救急医を5年以上やっていた従兄にこの話をしたところ、「エピペンを実際に打った人をはじめてみたよ」と言っていました。
エピペンを携帯している方も、なかなか実際に打った人は周りにいないだろうと思い、おろかなわたしの経験が、どなたかの役に立てればと思い記事にしました。
息子はあの時エピペンを打たなければ、最悪の事態になっていた可能性が十分にあるので、本当にこのタイミングで打ってよかったと思っています。